本研究の目的は先ず指数織分布族と呼びうる分布族を新たに導入してその族の解析面、実用面についての研究を行うこと、また推定関数については単純な核推定関数を誘導することにあった。研究の主眼はこの通りであったが、研究の遂行に従って2点の展開があった。1つは広島大学藤岡照夫氏との集中的な共同研究であり、もう1つは対数線型モデルの研究であり、これは CDC の研究者との研究討論から刺激を受けたものである。 研究のアイデアは分布の母数の直交性の構造の研究である。推定関数の不偏性との強い結びつきが見えてくる。更に推定規準として周辺尤度法との関連がある。後者はその基本的な構造は未だ見えてこないが少なくとも見かけ上の一致は明白である。スタイン推定量が周辺尤度法の枠組みの中で説明できるようになった。これは平滑化法の研究に展望を開く。多次元母数の推定論が、理論的にみても実践的に考えても、重要な研究課題と考えている。そうするとスタイン推定量と通常の母数模型での推定量の構築を同じ枠組で展開できることが大きい。別の視点からみると、周辺尤度の役割を見直す必要がある。これは Bayes 推定量との関係が想像される。 当初予定していた GEE についての研究は予想以上に困難であった。これは理論的な側面が明確でないことに依る。改めて基礎的な部分から練り直す必要がある。状態空間表現によるフィルタリングの理論との融合によって、理論的な背景を再検討している。
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