1)統計モデルは昔に考えられていたよりは多くの母数(高次元の母数)を含む方が実用的であることが理解されるようになった。低次元の母数ではどうしても現実を記述できないからでである。一方ではまた高次元の母数の推測では単純な最尤推定量の振舞は良くないことに注意する必要がある。 高次元の母数推定のためのナイーブではあるが有力な方法は母数を分離推定することである。ところが多くの研究者はNuisance母数という概念を導入したが、この概念は現実から遊離した空論である。申請者はこれまで条件付MLE、推定方程式などによって最尤推定量を修正する研究を行い、成果をあげてきた。 2)本研究では先ず指数織分布族と呼び得る分布族を新たに導入してその族の解析面、実用面についての研究を行った。また推定関数については単純な核推定関数を誘導する分布族の研究を行った。この研究での視点の一つは分布族の母数の非対称、より具体的には双対性、に重点を置いた。また実際の応用分野では生物統計の分野での適用を視野に入れて研究した。 3)より具体的には、指数織分布族を中心にして、直交性・双対性をキーワードにした分離最尤推定量の研究を行なった。また当然関連していると予想される推定関数への適用、あるいは分布族の修正を検討した。また分離推定をした残りの母数の推定について、条件付推定、経験ベイズ法を適用した。
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