本研究では、映像データベースを作成するために必要なデータモデル、検索言語および基礎技術を開発し、かついくつかの応用分野に対し、実際のデータベースを作成して有効性を検証することを目的としている。2年間の研究の初年度では、要素技術のひとつである、映像からの被写体(オブジェクト)抽出アルゴリズムの開発と、工場における作業者データベースを例題として、データベーススキーマの設計、必要なメディア依存オペレータとユーザインターフェースの作成を行った。被写体抽出の手法としては、静止画像における、色相、明度変化に基づく輪郭線抽出アルゴリズムを応用し、ユーザが大ざっぱに指定した物体から精密な外郭線を抽出すると同時に、その形状を前後のフレームに追跡するチェイサ-プログラムを開発した。抽出された形状変化借報は、元映像の各フレームと対応をとって、原画像と共にデータベースに蓄積できるようにした。この基本構造の上に物体の種類、名称など意味情報を付加し、さらに位置や動きの情報を加えてスキーマを構成することにより、汎用的な映像データベースの枠組みを完成した。2年度目においては2台のVGAカメラから取り込んだ映像データに対して、フリッカーなどによる色相と輝度のズレを補正し、またチェイサ-の性能を試行錯誤的にチューニングできるユーザインターフェースを作成した。さらに応用例として、工場における組立て作業の映像から手や工具の位置、形状を抽出し、データベース化することによって、生産性改善・合理化のためのIE調査のコンピュータ化に実際に適用し、工程設計者にとって映像データベースが支援ツールとして極めて有用であることが確認された。
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