研究概要 |
本研究は計算幾何学における効率の良い並列ロバスト算法の開発を目的とする。計算幾何学において最も基本的な問題-凸包問題に着目し、計量誤差と位相誤差の定量的な定義した。そして汎用性のあるPRAM並列計算モデルの上で、並列計算についての計量誤差と逐次計算の誤差との差異や計量性質と位相性質との関係などを解明し、効率の良い並列ロバスト算法を開発した。これらの結果を他の幾何学問題への適応や拡張することなどについても研究が行なわれた。 具体的に、位相誤差と計算誤差を表すために、凸包の概念をε-強凸δ-包の概念に拡張する。ここでは、εが位相誤差の尺度、δが計算誤差の尺度である。点集合Sが与えられたとき,ε-強凸δ-包(ε>0)は、各頂点がεの範囲内に移動しても凸性が保つ、そして、凸包との距離がδ以内であるSを含む凸多角形と定義されている。従って、普通の凸包より誤差に強い性質を持つ。Sがn個の点を持つとき、Sのε-強凸O(ε+β)-包(βは単位計算の誤差)をCREW PRAMの上で、O(log^3n)時間、nプロセッサで求める効率のよい並列ロバストアルゴリズムを開発した。定義により、Sの点がε-強凸δ-包の外にあることがあり得る。このため、さらに、包含包の概念を導入し、Sの全ての点を含むε-強凸δ-包含包を定義した。そして、Sのε-強凸O(ε+β)-包含包をO(nlogn)時間で求めるアルゴリズムを提案した。このアルゴリズムは逐次であるが、簡単にPRAMモデルの上で並列化できる。
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