研究概要 |
自律分散ロボットシステムでは,残りのロボットの動作を集中制御するための特別なロボットをおかず,それぞれのロボットは,平等の立場からロボットの動作を観察し,その状況に適した自分の動作を決定することでシステム全体としてある目的を達成する.これまで,研究の初期段階として,解析を容易にするために“ロボットは常に正しく動作する"という仮定を設けた上で,様々な問題を解決するアルゴリズムを設計してきたが,本研究では,この仮定を外して,故障やセンサー系や駆動系の誤差に強いアルゴリズムを検討した.主要な研究成果の概略を以下に示す. 1.任意の有限回の一過性誤動作からも自動的に回復し所期の目的を達成するような耐故障性を持ったシステム(アルゴリズム)を自己安定システム(アルゴリズム)と呼ぶ.ロボット整列問題を解く自己安定アルゴリズムを考察して,その限界と可能性を理論的に追求した(文献5,6). 2.項目(1)で延べた自己安定アルゴリズムの正当性は,抽象度の高いモデルに基づいている(例えば,ロボットは点としてモデル化されている).そこで,現実のロボットに自己安定アルゴリズムを搭載したときのシステムの振舞いについて詳細なシミュレーションを行なった結果,項目(1)で理論的に予想された通りの結果が得られ,アルゴリズムの有効性が確認された(文献3). 3.人が人混みの中を歩くときには,状況を動的に解析し,様々な予想外のできごとが起こることも考慮している.この意味で,人は耐故障性のあるアルゴリズムを習得していると考えられる.このような耐故障性の高いアルゴリズムを構成することを目的として,学習に基づくアルゴリズムの獲得の検討を開始した(文献4).
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