多段接続網(Multistage Interconnection Network: MIN)をプロセッサーメモリ間接続に用いたマルチプロセッサは、複数のメモリモジュールを同時にアクセスすることができることから、特に科学技術用の中規模(数十〜数百プロセッサ)システムとして有利な点を多く持つ。しかし、一貫性を保持したキャッシュを装備することが困難である問題点があり、実用化が遅れている。本研究ではMINのスイッチングエレメントに一貫性制御機構を付加したMINC(MIN with Cache coherent mechanism)を提案し、シミュレーションに加えてプロトタイプを構築することが目的である。 本年度は、三年目に当たり、初年度、二年目に実装した高性能多段結合網PBSF(Piled Banyan Switching Fabrics)チップとMINCチップを用いて実際のマルチプロセッサプロトタイプSNAIL-2を設計し、実装を行った。SNAIL-2は、2種類の基板で構成され、プロセッサモジュール16、メモリモジュール16を持つ。プロセッサには簡単で高速なRISCプロセッサR3000を利用し、ネットワーク負荷の高い状態でのPBSFの評価を可能とした。また、MINCによるキャッシュ制御機構を利用することで、共有メモリ読み込みのアクセス時間を従来の1/4以下とすることができ、幅広い条件でのキャッシュ評価環境を実現している。SNAIL-2は世界的にみてハードウェアによるキャッシュ制御機構を持つ初めてのマルチプロセッサである。
|