研究概要 |
画像認識・理解の研究において基本的に重要なことは、画像に含まれる個々の対象物に対応する領域を抽出することである。この問題は,画像の領域分割と呼ばれ,1970年頃から1980年代にかけて精力的に研究されてきた.最近では画像の意味を考慮した,所謂高級な研究に推移している傾向にあるが、最近新たな方法が提案されて以来,再び研究の活気を取り戻している.これは,初期輪郭から出発して、エネルギー関数の値によって弾性輪郭を変形・収束させる「スネ-クス」と呼ばれる方法が提案され注目を集めている。この方法は,エネルギー関数の形でグローバルな情報を取り込めるという特長を有し,さらに境界線の滑かさをも評価基準に組み込めるのが従来にない斬新な点である.しかしながら,方法自体は現在の解に逐次改善を施して最適解に収束させようという緩和法であり,局所最適解に陥る可能性を本質的に排除できない. 本研究では、様々な数学的基準に対して,その基準における最適解を求める問題がどの程度の計算手間を必要とするかを解析し,さらに多項式時間のアルゴリズムを得るためにはどのような制約条件を付加する必要があるかを考察する.今年度においては,縦あるいは横のいずれかの方向に単調な曲線によって囲まれる領域の中で,判別分析の基準(クラス間分散の最大化)において最適な分割を求める多項式時間のアルゴリズムをC言語により計算機上で実現し,さらなる高速化を図るとともに,様々な画像に対して計算機実験を行い,人間の目による判断との差について考察した.その結果、従来の方法では困難であった曖昧な境界の認識も可能であることが判明した。
|