我々は平成8年度の研究において再構築した意思決定支援システムを実際の研修医や歯学部の学生の教育に利用した。学生の教育に関しては、本学講座にモニタ、マウスを設置し、講義時に臨床症例を提示し、本システムを利用しながら、む学生に診断の過程を学習させる講義を行なった。本講義による教育効果として、学生の講義への積極的な参加が認められ、講義に(1)活気がある、(2)眠くならない、(3)診断過程の学習が容易、(4)人の意見が参考にできる、等の意見が得られた。これらのうちで、後二者は計算機により、専門家の診断過程をより明確に把握できることと同時に、計算機と多人数の討論により各々の診断過程に論じ、明確にできるという効果があることが示唆された。 また、研修医の教育に関しては、卒後研修生19名について、本システムを利用し、実際の臨床症例に関する検討を行なってもらったところ19名とも平均15分で正しい診断に至り、専門医でない医師の診断を支援するのに十分であることがわかった。これらの結果は今後の医療における大規模なマルチメディアデータベースの開発において重要な方向性を示唆しているとともに、教育現場における"仮想外来"の整備、また医療分野におけるマルチメディアシステムのHuman-Computer Interactionの可能な形式を示唆しており、今後のマルチメディアデータベース構築の視標となると考えられる。 また、現在、医療情報の領域において、本研究のような大規模マルチメディアデータベースを利用した教育環境の構築は経験がなく、本邦では最初の試みである。
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