多面図と3次元空間図形との関係を規定する図法幾何学は、3次元モデリングの論理的な過程を与えるが、一つの面図から複数の立体が表される場合や、入力面図が矛盾を含む場合に、面図が本来意図する立体を特定する方法は与えない。本研究では、プロトタイプシステムに曲面を含んだ立体の認識機能を加えるとともに、種々の矛盾が原因になると考えられる場合に対して、人間が図面認識を行なう際の知識、処理過程を解析し、その利用可能性の検討を行ない、意図された3次元モデルを推定するための機能の高度化を進めた。 曲面としては、これまでの図面認識の多くで取り上げられている円筒面に加えて、部分球面、部分円錐面を対象としている。立体生成モデラ-として、立体を境界面から構成するB-Reps法と、プリミティブとよばれる基本立体要素の集合演算から構成するCSG法を併用したハイブリッドモデラ-を提案した。その上で、曲面部分がもたらす矛盾は3種に分類し、これらについて、矛盾解消アルゴリズムを提案した。特に、複数の矛盾が同時に存在する場合にも矛盾の解消が可能となるように、アルゴリズムの改良に注目し、曲線線分が欠落しているばあにも、その線分の存在を推定し、設計者が意図した立体を生成する方法を示した。 本研究は、人間が空間図形の認識に対して持つ推論体系の解明にも貢献するものであり、その成果は、誤認識の少ない設計図面自動認識システムの構築に利用できる。また、3次元モデリングの入力データの作成において、入力面図からは完全な立体が構成できない時も、計算機の側から入力面図に存在する不備な点を示唆する知的インターフェイスの開発にも適用することができる。
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