研究概要 |
本研究は,複数の学習者の共同による科学概念の発見プロセスを,認知科学的な側面から検討することを主目的としている。なお,本報告は,平成8年,および平成9年の2年にわたって大なわれる研究の前半に関わるものである。 本研究では,科学的発見の題材として,遺伝に関する「メンデルの法則」を取り上げた。 まず,実験に用いるCAIシステムを開発した。システムは,学習者に対して,メンデルの法則を発見するための様々な実験を行うことができる「マイクロワールド」を提供する。実現されたマイクロワールド上では,種の交配,成長,開花,種の結実等のプロセスがシミュレートされ,学習者は様々な条件を制御しながら実験進め,それぞれの仮設を検討し合うことができる。 本システムを用いて,2人ずつ10組程度の被験者(高校生)に,メンデルの法則を発見させた。実験の過程を通して,ビデオカメラとテープレコーダーを用いて,学習者の発話やシステムの操作状況等を記録した。 実験結果は,システムの操作履歴や発話に基づくプロトコル分析により,次の3つの階層から分析された。 もっともプリミティブなレベルでは,各被験者の発話単位で,提案,説明,同意,質問,反論等のラベル付けを行い,そこより次の第2のレベルのユニットが作られてゆくプロセスを観察した。第2のレベルとして,仮設形成,実験計画,実験の実施,実験結果の解釈,仮設の検証や反証という単位に着目し,その一連の過程が,2人の学習者の間またがって存在する入れ子構造を明らかにした。更に,もっともグローバルなレベルでは,第2のレベルの相互関係が,「全体のプロセスを通してどのように変化してゆくのか」を検討し,そこより,成績の良いグループと,成績の悪いグループを比較して,両者のプロセスの特徴を抽出した。
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