研究概要 |
本研究課題における目的は,距離画像処理専用ソフトウェアライブラリの構築である.本研究は,1.部分課題への分化,2.部分課題の体系的整理,3.実装ライブラリの評価の順で行った. 1.部分課題への分化では,距離画像利用時に必要な処理の列挙および分類を行った.この作業は,構築するライブラリの性能を左右する点で重要である.選別は既存の処理技術として実用性の高いものを基準として行った.その結果,ノイズ除去,形状データの合成,エッジ抽出,領域分割,パッチ化,モデルマッチング,キャリブレーションなどの部分課題を設定し,それぞれについて現存する技術を列挙,整理した.これにより,基本的な幾何学演算を全ての部分課題で利用できることも判明した. 2.体系的整理では,部分課題を計測,特徴抽出,記述,応用の4つの階層に振り分けることで,高度な距離画像処理におけるそれぞれの部分課題の位置づを明記した.この階層化を基にライブラリを設計した. 3.実装ライブラリの評価では,まず人工的に合成した距離画像によるシミュレーションを通してアルゴリズムの特性を調査し,次に,実測距離画像による実用レベルでの信頼性を評価した. ライブラリ実装の際には,(1)同一の部分課題に対する異なる処理手法の相違点の明記,(2)開発環境に依存しない移植性,(3)プログラムの明解さに留意して開発を行った.その結果,本ライブラリは実用における高い信頼性と拡張性を実現できた.現段階では,我々のこれまでの技術的成果および学術雑誌等で発表済みの技術のみについて実装を行った.そのため,物体の形状記述に関しては多面体を使用する方法のみ採用した.今後は,ベジェ曲面に代表される局所的な曲面表現,超二次曲面に代表されるパラメトリックな形状表現に関する機能拡張が必要となる.
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