本研究では、印刷楽譜を読みとってそこに含まれる楽曲の情報を自動的に認識する技術と、印刷楽譜から認識した楽曲の情報を点字表現の楽譜及びMIDI信号に変換するシステムの開発を目標とした。 印刷楽譜の認識では、まず五線を検出して音符の存在する範囲を特定し、その後音符や種々の記号を抽出する。五線の検出は、取り込んだ楽譜の画像を縦方向に走査して等間隔で現れる5個の点を求め、その結果と画像の横方向のヒストグラムを求めて等間隔で現れるピークの位置情報をもとにして五線の位置を推定する方法を採用した。次に五線の位置から音符の存在する範囲を限定し、その範囲において縦方向のヒストグラムを求めて黒点の分布状況から音符や記号の位置を推定し切り出す。音符や記号は各々形に特徴があるのでヒストグラムの形状も異なる。この性質を利用して音符や記号の認識はヒストグラムを求めた結果のデンプレートマッチングで行った。音符と認識された場合は更に五線の位置からその音階を求めた。音符等の認識に関しては、五線の位置は十分な精度で推定可能であるが、まだ一部の記号で認識率が十分でないので認識手法を改善して向上させる必要がある。 印刷楽譜の認識結果を表現する記号は印刷楽譜、点字表現の楽譜、MIDI信号間の変換過程で利用される中間的な表現であるので、ここでは中間コードと呼ぶ。中間コードは通常の楽譜の表現規則を、コンピュータ上で取り扱いやすいように数字や文字による記号表現に対応付けたものであるが、このコード体系を整備した。楽譜を点字で表現する方法はすでに提案されているコード体系があるので、それを採用した。点字表現の楽譜は8進数に変換した表現を使用した。これは点字が6個の点の集まりで1文字を表現するため2桁の8進数を用いた表現と親和性が高いためである。そしてこれらの表現の間で相互変換が行えるようにした。
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