筆者らは、連続画像からの運動物体の速度、粒径あるいは粒径分布計測法としての、一連の動画像処理アリゴリズムの提案を行ってきた。本研究では、筆者らが提案してきた動画像処理アルゴリズムを、新しい科学計測手法として位置づけ、動画像処理の可能性を追求することを目的とした。ここでは、従来は人手を多く必要とした微粒子検査の1つと考えられる、空気中の花粉量の検査を研究対象とした。いままで自動化が困難であった検査を、非接触、簡易化、迅速化を目的とし花粉の粒径や単位面積当たりの含有状況を自動的に計測するシステムの開発を試みた。まず、ポリスチレンラッテクス粒子を用いた顕微鏡画像を対象に試みた。静的光散乱法を画像処理に応用し、擬似ブラウン運動を取り入れた処理アルゴリズムを用いることで、高精度で粒径計測が可能な動画像処理システムの提案を行い、粒子数の自動計測システムの可能性を示せた。次に、採取した花粉を対象とした画像を用いて実験を行ない、シミュレーション実験と同等の結果を得ることができた。しかし、提案手法は、種々の微粒子が混在していない場合の解析法であり、粉塵等検出対象以外の微粒子(検出対象粒子と同一粒径)が存在する場合の検討、花粉採取方法の検討など、今後の課題である。また、筆者らが開発したパソコンを用いた動画像取り込み装置の改良を行う予定であったが、計算機パワーの向上により、ハードディスクに直接画像データを格納することが可能になった。そこで、従来システムの知識を基に、新たな発想での画像取り込み装置の開発を行っている。同時に、画像処理の専門家でないユーザに利用しやすいシステム開発などより使いやすい計測処理手法・システムの確立を検討する必要があると考えられる。
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