研究概要 |
1960年代後半,米国のARPANETから始まった計算機ネットワーク環境は,今やインターネットとして地球規模に発展し,今日では,単なる計算機ネットワークというよりも,マルチメディア情報システムとして機能している.World-Wide-Web(WWW)やMulticast Backbone(MBone)などにみられるその応用は,通信というよりは,より放送的で,マスメディアの様相を呈してきた.このような環境下では,今までの文字やソフトウェアなどのデータ転送を中心としていたネットワークでは経験のない,新しい形の脅威が存在する.本研究では,そのような脅威のひとつである識閾(しきいき)下効果による脅威についての対策を考える. 平成8年度は、5月はじめに行なわれたIEEE Symposium on Security and Privacyで本研究課題について簡単な発表を行なった際得られたフィードバックに基づいて、問題定義と、マルチメディアのセキュリティ分野における本研究課題の位置づけなどの研究を主に行なった。情報隠蔽(いんぺい)技術(steganography)の分野や、潜在通信路(sublimnal channel)など、これからの音声や画像を含むマルチメディア通信におけるセキュリティ問題を把握できたことは、本研究課題の特異性の認識に役立った。その成果は平成9年11月にカンヌ(仏)で開催されたICCC‘97で発表した。 平成9年度は、主にインターネット環境における映像情報に識閾(しきいき)下メッセージ挿入などの手法とその対策について研究を進めた。画像の基礎的な学習に終始し、具体的な検出アルゴリズム作成までには至らなかったが、今後の方向として映像フレーム間の動きベクトルの変化による検出方法を考えていきたい。 対策モデルとしては、検出機能を受信者あるいは近くの代理エージェントに持たせるということにした。公証機関(Certification Authority)の利用も将来検討したい。
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