睡眠の総合的な研究や睡眠の診断と治療効果等の評価を、高精度で効率よく遂行するための一助として、ワークステーション(HP VISUALIZEモデル160)を使った睡眠生理現象の自動解析システムを開発した。このシステムは今までミニコンピュータ(1977〜1985年)とスーパーミニコンピュータ(1985〜1996年)を使って開発し、基礎と応用の試験を実施してきた内容に、改良と拡張を加えて移植したものである。システムの良否は、睡眠の最大の指標である脳波の分析法によってほぼ決定される。そこでまず、独自に開発して採用してきた脳波の簡易的な周波数分析法であるinterval histogram法の再検証を行い、実用上全く問題ないことを確認した。ワークステーションへの移植に際し、睡眠研究者が視察的に睡眠記録を判読して行く過程に、出来るだけ従って自動化することを構築の基本とした。システムの主な特徴は、GUIによる操作性と処理速度の大幅な向上である。研究者は任意な分析項目の選択や生理現象波形の観察、分析結果の妥当性の検討等を、ウィンドウ上のグラッフィック表示をマウス操作するだけでほとんど達成できる。処理に最も時間を要するのは波形分析に関してであるが、これは数十倍の改善がなされ、現実には1分程度で可能となった。睡眠段階の自動判定をはじめとする他の分析項目にはほどんど時間を必要としない。従って、再分析や今後の一層の改善が容易に行えるようになった。試験的に複数の実験データを分析したところ良好な結果が得られ、初期の目的は達成された。本年度の日本睡眠学会学術集会におけるワークショップと学術展示、日本脳波・筋田図学会学術大会における学術展示で、実際にシステムを稼働して成果の一部を報告し、一応の評価を受けた。この際、価格面で有利なパーソナルコンピュータへの移植とシステムの社会的還元を強く要望され、平成9年度に実現すべき緊急な課題であると認識した。
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