情報ハイウェイの性能評価ツールとして前年度に開発された出生死滅ベース(あるいはより一般にマルコフ・ベース)を拡散モデルに対し以下の結果を得た。 1.キャンパスLAMのような巨大ではあるが閉じたネットワークに対し、ネットワーク内の各ノードにおいて擬似的な局所平衡関係が成立することを仮定して、各ノードを状態依存到着率をもつM(n)/G/s/N待ち行列で近似する。ノード間のフローバランスが保たれる状態を状態空間内の不動点として捉え、出生死滅ベース拡散モデルを用いて、この不動点を求める効率的で高速な反復解法を開発した。この結果は、小規模ネットワークに対する数値例とともに、1997年4月に九州大学で開催された日本オペレーションズ・リサーチ学会春季研究発表会で報告され、現在論文としてまとめている。 2.先行研究における既知の拡散モデルと対比するために、コンピュータ/通信システムに対する拡散モデルのサーベイを行った。この結果は、1997年8月に広島で開催されたSSOR'97、同年9月に札幌で開催された日本オペレーションズ・リサーチ学会北海道支部研究会、1998年1月に京都で開催された「情報通信ネットワークの新しい性能評価法に関する総合的研究」シンポジウムで報告され、論文"Diffusion Models for Queues in Computer/Communication Systems"としてまとめられ、各報文集にまとめられている。また、このサーベイの理論的背景については、論文「拡散近似:連続と離散のはざまで」にまとめられ、オペレーションズ・リサーチ誌1997年8月号に掲載された。既存モデルとの対比により、本研究で開発されたマルコフ・ベース拡散モデルが、通信システムのみらなずコンピュータシステムに対しても広範な応用範囲をもち、既存モデルの近似精度を大幅に改善できることが明らかになった。
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