不規則性と曖昧性を共に有するデータとして、確率ベクトルの実現値として得られる不規則データを曖昧に認識する場合について、本年度はその数学的なモデルとしての一種のファジィ確率ベクトルを提案した。さらにその若干の性質についても考案した。提案したファジィ確率ベクトルの特徴としては、次のような点を挙げることができる: 1.ファジィベクトル間等の算術演算が見通しよく行えるようにするために、全面的にファジィ集合の集合表現を採用した。 2.ファジィ確率ベクトルの期待値を、基本的には多値理論に基づく方法論に従って導出しているが、「対応の理論」(theory of correspondence)を応用することによって、多次元のファジィ確率変数、すなわちファジィ確率ベクトルに対しても、自然なかたちでその期待値を定義できるようにした。さらに、分散等の2次の統計学的モーメントをも合理的に定義することが可能となった。 3.ファジィ確率ベクトルの集合表現を「対応」の集まりで定義したことにより、対応の積分に関する豊富な数学理論を応用することが可能となった。また、それらを用いてファジィ確率ベクトルの期待値や分散等の若干の性質を理論的に検証することができた。さらに従来から提案されている他の定義法によるファジィ確率変数との関連を考察する基礎が確率できた。
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