老年人口係数が30%を越す地域で暮らす高齢者を対象に、その日常生活の実態と問題点を明らかにし、超高齢化に対応できる社会システムの構築に必要な基礎資料を求めることが本研究の目的である。 平成9年度は主として質問紙調査を中心に実施した.調査対象は長野県の過疎山村A村に住む独居高齢者108名、高齢者夫婦241名の後継者である子ども達で、離村している全員に配布した.質問内容は、村に戻る予定、所有する田畑への意識、今後の農業継続の意志、親への援助等である.回収率は34.4%で、主な結果は次の通りであった. 将来、村に戻る予定の者は僅か21.7%しかいなかった.一方、所有する田畑については、村に戻る予定がない者でも、たとえ荒れても他人に貸したり売ったりすることには慎重な様子で、過疎地の農地の荒廃化傾向は今後もますます進行することが予想される.親への援助に関しては、農作業や買い物、掃除等の手伝い、生活費の補助等など、ほとんどの人が何等かの援助を行なっていた.また、子ども以外にも、近所の人や親の兄弟親戚等が援助しており、これらの援助があるために高齢者だけでの生活が成り立っていると言える. 今後の要望としては、村内に老人ホームの建設を望む声が多かった.これは慣れた地域に住み続けたいという高齢者の気持ちと、そうであれば安心という子どもの気持ちの反映である.またそうした施設がないために、病気や怪我がもとで日常生活を自立して営むことが困難になると、離れて住む子どもの家に行って世話を受けることになり、その結果、高齢者が自殺する例すらある現実への不安の表現である.したがって、家族の介護者がいない、あるいは得にくい高齢者も、住み慣れた自宅ないし地域でより長く生活できるように新しく「高齢者在宅支援サービス」の充実が急務と考えられる. 我々も今後は、この新しいサービスシステムの設計指針を求めて、研究を続けていく予定である.
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