研究概要 |
中部日本の断層系として代表的な敦賀湾-伊勢湾構造線と御母衣-阿寺断層系を構成する活断層を対象として,以下に述べる現地調査やデータ収集を行ない,断層系の特徴を把握した.次に,得られたデータに基づいて,従来から提示されている危険度評価法の問題点を指摘するとともに,地震モーメント平均解放速度が断層系で起きる地震危険度を評価する上で重要な指標となることを明らかにした. (1)まず,研究分担者と共同で関ケ原断層と伊勢湾断層,阿寺断層,御母衣断層などの現地調査を行ない,活断層の規模や変位量,破砕帯の幅などを精密に測定した.関ケ原断層については,トレンチ発掘調査の結果から最新活動の証拠を発見した. (2)伊勢湾断層の位置について,伊勢湾内で得られている最新の音波探査データや重力データなどを再検討し,その位置がほぼ確定された.一方,伊勢湾内および周辺地域に伝えられている沈島伝説について,古文書や聞き取り調査などを行ない,その真偽を検討した.その結果,いずれの沈島伝説も1596年に起きた天正地震(推定M7.9)に関係する可能性が高いことがわかり,天正地震の震源は伊勢湾内にあったことが指摘され,濃尾平野の地震危険度を考える上で重要な資料が得られた. (3)以上の現地調査による断層系の特徴と歴史地震発生の関連性を検討し,これまで活断層から発生する地震危険度評価に使われてきた方法の問題点を指摘した.従来の方法では,活断層の長さと平均変位速度がそれぞれ独立に,地震規模と活動間隔の算定に用いられてきており,1995年兵庫県南部地震(M7.2)の発生が充分に評価できないことを指摘した.これに対して,この2つのパラメータの関数である地震モーメントの平均解放速度が断層系の地震危険度を評価するための重要な指標であることがわかった.
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