研究概要 |
活断層系で発生する内陸大地震によって誘発される災害を軽減する目的で,地震モーメントの平均解放速度を用いた危険度評価を開発し,中部日本の代表的な活断層系と,新たに定義された中国地方の2活断層系に適用し,その妥当性を検証した.さらに,この評価法を1995年兵庫県南部地震(M7.2)の危険度評価にバックフィットし,この地震の発生を充分に説明できることを指摘した.以下に,得られた主な成果を示す. 1. 中部日本の断層系として代表的な敦賀湾ー伊勢湾構造線を対象として,断層の平均変位速度と歴史地震のマグニチュードから,地震モーメント平均解放速度を求めた.さらに,伊勢湾湾岸地域に伝承されている沈島伝説に関して,史料や現地での聞き取り調査を行ない,この構造線で起きた最新地震(1586年天正地震)を評価し,経過時間を決定した.これらのデータに基づいて,断層系(構造線)の地震危険度の評価を試みた. 2. 中国地方西部において,断層の分布と歴史地震の分布から2つの断層系(大原湖ー弥畝山西断層系と岩国ー上根断層系)を定義するとともに,上記と同様に地震モーメントの平均解放速度を用いて,地震危険度評価を行なった.さらに,1997年山口県北部地震(M6.1)の発生について検討を加えた. 3. 既存の微小地震や重力データを現地調査結果と組合わせ,断層系(構造線)の3次元幾何学を明らかにするとともに,得られた物理量から地震モーメントの平均解放速度を計算した.この結果は,上記1と2で計算された結果とよい整合性が認められた. 4. 上記の危険度評価法を,高槻-六甲-淡路構造線に適用し,兵庫県南部地震の発生が正当に評価出来ることを指摘した.
|