河岸侵食や河床洗掘を防止するために、従来、種々の工法が用いられているが、生態系に対する配慮から、最近、石礫護岸・護床工の利用が見直されている。動植物の棲息空間を確保する意味からは、護岸・護床工に比較的大きな間隙を持たせることが望まれるが、そうすると、間隙からの土砂の抜け出しが生じやすくなる。そこで、本研究では、石礫護床工を上層から順次粒径の減少する階層構造にすることにより、大きな空隙の確保と河床砂の抜け出し防止を両立させつつ、できるだけ単純かつ経済的な設計条件を見いだすことを試みた。その結果、中間粒径層を適切に選ぶと、単一粒径の場合よりも小さな合計礫層厚で河床砂の抜け出しを防止できることがわかった。 一方、湾曲水路における河床の洗掘力を軽減するために用いられるベーン工を緩傾斜河岸の侵食防止に適用することを試み、ベーン高さ、ベーン長さと間隔、迎え角を変化させて、河岸侵食および河床洗掘状況の比較を行った。その結果、ベーン工がない場合には河床の洗掘はさほど進行しない反面河岸が激しく侵食された。そこで、従来、側岸の固定された長方形断面水路において推奨されている設計条件に準じて、高さを水深の1/2、長さを水深の約2倍、間隔を長さの約4倍、迎え角を-15°とするベーン群を法尻に設置したが、河岸の侵食は防止できなかった。次に、ベーンの長さと間隔はそのままで、高さを水面よりも上にし、迎え角を+18°にしところ、河岸の侵食はかなり軽減できたが、ベーンの近傍で激しい洗掘が生じ、それが広範囲に及んだ。さらに、ベーンの長さを水深の約8倍に増やして間隔をその5倍に拡げたところ、ベーン高さが水深の1/2の場合には河床の洗掘は軽減されるが河岸の侵食が激しく、ベーン高さを水面よりも高くすることによって河岸の侵食と河床の洗掘をいずれもかなり軽減できることがわかった。
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