今年度も昨年度作成した中型の模型斜面(6m)を用いて衝撃実験を行った。特に、今年度は落石重量を増加して、昨年度と同様の手法で落石距離および斜面の勾配を変化し、横型斜面下部の荷重計測装置で衝撃力を、また落石が斜面下部の荷重計測装置に衝突直前の落石速度を計測した。さらに、落石が荷重計測装置のどこに衝突するかによって衝撃力に違いが生じることが考えられ、衝突場所による衝撃カの違いについての検定実験も行った。この検定実験から衝撃力は勾配が30度と40度ではそれほど違いが見られなかったが、50度では衝突面の中央部分が周面部分より若干大きな値を示した。そこで衝突場所による補正係数を求めて補正した衝撃力(補正衝撃力)と補正をしないそれとの比較を行った。その結果、補正衝撃力が若干大きな衝撃力を示す傾向があり、今年度の実験では補正衝撃力と補正なしの場合の両者について整理をした。結果的には両者のその差はそれほど大きなものではなく測定値のばらつきを考えると補正をしないものでも工学的には十分であると考えられる。また、これらの衝撃力に対して重回帰分析を適用した。その結果、衝撃力には斜面勾配がもっとも大きな寄与しており、ついで落石距離、落石重量の順になることが明らかになると同時に、衝撃力を推定する実験式を誘導した。つぎに落石速度に対しても重回帰分析を適用した。その結果、落石速度には落石距離がもっとも大きな寄与しており、ついで斜面勾配、落石重量の順になったが、落石重量ついては統計的に有意でないことが明らかになったので、落石距離と斜面勾配の2変数に対して重回帰分析を適用した。その結果物体の自由落下速度の式から誘導した理論式についてその係数を決定することができ、落石速度を推定する実験式が求められた。
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