研究概要 |
第1年度の平成8年には次のような作業を行った。 1.ガラス・デュワ瓶の底部にタングステン針電極を対向させて、液体ヘリウムを満たし、22kV,0.5μsのパルス電圧を印加してパルス放電を行わせる。その発光を焦点距離25cmの分光器に導入した。分光スペクトルをイメージ・インテンシファイア及びマルチ・チャンネル検出器を通じて、可視光スペクトルのデータをパソコンに記録した。放電後4μsまでの発光の時間変化を解析した。 2.発光強度の比較的強いいくつかの線スペクトルの広がりについて、シュタルク広がりの理論から計算したプロフィールと合わせることにより各時刻のプラズマ密度を求めた。また、線スペクトルと連続スペクトルの強度比から電子温度を求めた。初期にはプラズマ密度10^<18>cm^<-3>,電子温度4万度であることが分かった。1気圧,4.2度の常流動液体ヘリウム,6 Torr,1.62度の超流動液体ヘリウム,低温または常温ヘリウム気体で実験を行い比較した。その結果、液体ヘリウム中では、常温では実現できない低温高密度のプラズマが発生されていることが分かった。 3.ヘリウム原子からの線スペクトルの発光以外に、広がりのないヘリウム分子からの線スペクトル列を観測した。或る列は分子回転運動で説明出来るが、理由が分からない列も観測した。 4.液体ヘリウム中で放電プラズマを発生して測定した前例はない。我々の以上の実験結果は、1997年7月フランス・トールーズ市で行われる電離気体国際会議の招待講演になっている。
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