研究概要 |
温度4.2度以下、1気圧の液体ヘリウム及び4.2度付近、1気圧程度の極低温気体ヘリウムの中での高電圧パルス放電後に出来たプラズマについて、波長380-720ナノメータの領域での時間分解した分光測定を行なった。パルス放電後の早い時期には、中性のヘリウム原子の線スペクトルのシュタルク広がりより、グリームの理論によってプラズマ密度を求めた。その結果、0.2マイクロ秒後には3X10の18乗/ccに達していた。線及び連続スペクトルの強度比から電子温度は、0.2マイクロ秒後に35,000度と求められた。これらの結果を用いてクーロン結合係数を計算すると、約0.1となり、常温ヘリウム気体中での値の5倍程度の中程度の低温の強結合プラズマが得られていることがわかった。 また、中性のヘリウム原子の線スペクトルに加えて、430及び395ナノメータ付近の領域で、広がりを伴なわない強い線スペクトル列を観測した。前者は、2原子ヘリウム分子の回転振動励起準位間の遷移であると同定した。後者は、既存の文献に報告例がなく、また、理由も現在のところ分からない。これらの線スペクトル列は、77度(液体窒素温度)あるいは常温の気体ヘリウム中での同じ条件での放電プラズマでは観測されない。急速に冷却される弱電離プラズマである周辺部では、基底準位の原子が豊富に存在するため、2原子ヘリウム分子が発生して430ナノメータ付近の分子発光が起こる。一方、完全電離プラズマである中心部からは、シュタルク広がりを伴なう単原子発光が起こると結論した。 加圧超流動を含めて、液体ヘリウム中で放電プラズマを発生させ、以上のような、今まで知られていない事実を見出したのは、本研究が初めてである。この研究分野は未知の現象が多くみられ、今後発展すると予測する。
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