研究概要 |
研究目的 日本で唯一の平均1MeVの高速中性子を発生する東京大学高速中性子源炉「弥生」を利用し、高速中性子ラジオグラフィ撮影技術高度化のための研究を進めている。本研究の目的は、高速中性子用イメージングプレートを開発することである。イメージングプレートによる撮影の長所は、その解像度が50μm以下であり、測定量のダイナミックレンジが広いため、低照射量でも十分な撮影ができ、短時間照射で解像度の高い撮影が可能となる。本研究において、高速中性子とイメージングプレートとの相互作用のモデリングを検討し、そのモデルを検証する形で、高速中性子ラジオグラフィ用イメージングプレートの試作開発を進める。 研究方法 高速中性子用イメージングプレート(IP)の開発にあたり、まず高速中性子によりどのようなメカニズムで、IP内において輝尽性蛍光となるカラーセンターが生成するかというモデルを検討する。そのモデルを基にIPの試作を行う。その特性測定は「弥生」の高速中性子ラジオグラフィ場で、照射量をパラメーターとして照射し、照射済みIPの読みとりは日本原子力研究所の装置を利用して行う。 研究結果 高速中性子用IPの感光のモデルとして、反跳陽子による反応と2MeV以上の中性子のみにより起こる^7Li(n,n′,α)Tが有望と考え、中性子反応断面積、中性子スペクトル、およびIPに付与するエネルギーを考慮に入れてモデル計算した。その結果、弥生の中性子スペクトルでは、ほぼ同程度の感光量になると推定された。よりエネルギーの高い中性子に対しては^7Li含有IPの方が感度が高くなることが推定された。また、X線用のIPの表面にポリエチレンシートを張り照射したところ、増感作用があることが分かった。このモデルをもとに、通常のX線用IPの構成元素量に^7Liの量を追加したIPのサンプル、および水素含有量を増加させたIPサンプルを試作した。なお、試作する前の調整時間がかなり必要であり、試作サンプルができたのが平成9年1月になってからであり、また、原子炉のマシンタイムが2月しか取れなかったので、現在、実験中であり、十分な結果が得られていない。今後の予定として、実験結果を考慮し、それに基づき改良したIPの試作を繰り返し、実用的な高速中性子ラジオグラフィ用イメージングプレートを開発する。
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