固有安全炉における受動的安全システムの原理的検証として、サブループによる安定制御法とサーモサイフォンによる余熱除去法に関する基礎実験を進め、以下の成果を得た。 1.固有安全炉模擬装置を用いる熱水力学的安定性実験および制御特性最適化実験と解析 PIUS炉の安定制御性の裕度を向上させる鍵として新たにサブループを持つフィードバック制御方式のモデルを提案し、模擬熱流動実験装置(EARTH)に導入したサブループを小型ポンプでフィードバック制御し、密度ロック中の温度境界層を水力学的に安定制御して炉物理的安全性確保を実験的に模擬・検証し、次世代の格段に安全性の高い軽水炉実機への適応可能性を向上させた。さらに熱水力模擬実験を通じて、一次系ポンプ速度摂動にたいする密度ロック中の冷暖界面の周波数応答性を計測し、実験装置を一次元流動ループにモデル化し、伝達関数表現により解析し、流体慣性、流路面積、冷暖流体間密度差の影響を評価して、実機適用へのスケーリングの進め方を明らかにした。 2.ヒートパイプ内対向2相流中性ラジオグラフィ実時間画像の時空間相関実験・解析 日本原子力研究所3号炉の中性子ラジオグラフィ施設のテレビジョン法を用いて、断熱部に屈曲部を持つサーモサイフォン式ヒートパイプ内における対向二相流の可視化・画像処理・時空間相関解析により、作動流体の経路と速度、確率密度関数よりボイド率分布、などの情報を得ることができ、今後の固有安全炉崩壊熱除去システムの基礎的な設計のための気液対向二相流挙動を定量的に可視化解析する方法を確立できる見通しを立てることが出来た。
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