1.X線スペクトルの測定 CdTe、CdZnTe半導体検出器は、Ge検出器よりも分解能は悪いが常温で使えるので、医療現場での使用に適している。これを用いてX線スペクトルを測定し、測定結果を補正する方法を検討した結果、Ge検出器で測定したスペクトルに近い結果が得られるようになった。 2.グリッドを用いた場合のX線スペクトルと画質及びグリッド効果との関係 われわれのグループは、以前に、散乱X線と一次X線(直接線)を分離して測定する方法を開発した。この方法を用いて、散乱X線除去用グリッドを通過してから画像面に入射する散乱X線と一次X線スペクトルを、分離測定することに成功した。この測定結果を用いて、胸部臨床写真を例にとって、最適グリッド比を見出す方法を示した。また、グリッドの散乱X線除去効果の管電圧依存性を空間周波数を変えて求めた。さらに、グリッドの性能を表すBukky factorと散乱線含有率を結び付ける方法に言及した。 3.視覚の心理物理的特性を考慮したX線写真の最適撮影条件 視覚の心理物理的特性とX線スペクトルとを用いて、胸部の臨床X線写真について、最適濃度又は最適濃度範囲で目的物を識別するための最適撮影条件(kV値、mAs値)を求める方法を示し、実例について、視覚実験を行って確認した。 4.増感紙・フィルム系のMTFと粒状のウィナースペクトル 増感紙・フィルム系のMTFの管電圧依存性の測定結果を、散乱X線の効果として説明した。粒状のウィナースペクトルについては、クロスオーバー効果と量子モトルの管電圧依存性との関係、心理物理的効果を考慮した粒状の主観評価結果の説明について、成果を上げた。特に、クロスオーバー効果は画質の評価尺度としての鮮鋭度を悪くするが、被曝線量を減少させる効果があることを見出した、重要な成果である。
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