研究概要 |
CCDカメラ素子の高集積密度半導体素子を利用して,約10μmのミクロ領域での中性子照射効果について調べるための装置を開発した。Si結晶中において,中性子核反応で発生する高エネルギー荷電粒子の飛跡を画像としてうまく観測することができた。高速中性子による(n,α)や(n,p)反応に対応する画像データ(実験値)は,核反応データを基に測定系をシミュレートして求めた計算値とよく一致した。このような電気的な方法で中性子反応のミクロ領域での効果を調べる見通しが得られたと言える。また,CCD素子の各画像に残された損傷量を定量化処理することによって,DT14MeV中性子とDD2MeV中性子による損傷の大きさを比較した結果,CCD素子に対するDT-DD中性子損傷相関係数は,1.4〜1.6であった。この結果は,Si結晶に対する中性子照射損傷(原子弾き出し損傷)のシミュレーション計算から求められている損傷相関係数ともほぼ一致している。ミクロな視点から見た損傷量の評価がうまく出来る事を示している。 重イオン加速器とSi表面障壁型半導体検出器を利用して,中性子反応で生じる反跳原子による効果について調べることを試みた。測定された出力電荷スペクトルは,荷電粒子輸送コードTRIM(2体衝突近似法)とMDRANGE(分子動力学法)のシミュレーション計算結果と比較され,低エネルギー領域において,結晶構造を正確に取り入れる分子動力学法に基づく計算結果により良く合うことが分かった。分子動力学法によるシミュレーション計算の有効性,重要性が強く認識された。
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