研究概要 |
本研究の目的は,次期点火実験級のレーザー核融合ペレットにおいて,核反応で発生するα粒子の減速輸送がペレットの点火と燃焼に及ぼす影響を解明することである。本年度は主に輸送及びエネルギー付与の計算法の精密化に取組み以下の成果を得た。 1.α粒子の衝突素過程として,クーロン衝突の他に,核力による大角度散乱,即ち核弾性散乱を考慮し,これを輸送方程式に組込んだ。また,輸送方程式のフォッカー・プランク項に含まれる阻止能に関して,電子のフェルミ縮退を考慮できるよう改良を加えた。方程式は時間依存で,媒質の流体運動を考慮するため,修正オイラー座標系を用いて記述されている。従って,本計算法は一次元(空間)の範囲で最も精密なものである。 2.圧縮DTペレットの中心部で発生したα粒子の減速輸送を種々のプラズマ条件下で解析し,エネルギー付与における電子縮退効果や高速核融合反応の生起確率に及ぼす核弾性散乱の影響を検討した。電子の縮退があると,古典的なマクスウエル分布を仮定して計算した場合に比べて電子の阻止能が低下するため,減速が弱まり加熱領域がひろがる。例えば縮退度【planck's constant】.3のとき,減速時間は1.5〜2倍になり,イオンへのエネルギー付与割合も約2倍に増加する。また,点火実験級のペレットでは,α粒子は大角度散乱(核弾性散乱)により高エネルギー反跳イオンを発生させ(中性子衝突による発生数とほぼ同数),高速核融合反応の生起確率に中性子と同程度の寄与をすることが 次年度は,α粒子によるエネルギー付与に対する近似的計算法の妥当性及び適用限界を検討する。さらに,輸送/流体結合シミュレーションにより爆縮・点火ペレットにおけるα粒子効果を解明する。
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