核燃料再処理ならびに核融合施設周辺のトリチウムの汚染によるヒトの障害を考えるとき、もっとも放射線高感受性の系、たとえば、胎児への影讐のリスクがまず問題となる。本研究はマウス胎児脳細胞培養系ならびに肢芽培養細胞系を用い、トリチウム水ならびに有機結合型トリチウムの中枢神経系など器官形成発達に及ばす影響を定量的に解析し、トリチウムのリスク推定に資することを目的とする。 平成8年度内に確立した胎児脳細胞培養系ならびに肢芽細胞培養系を用いて、トリチウム水の中枢神経系細胞ならびに肢芽細胞に対する障害作用の線量-効果関係を求めた。また、妊娠マウスを用いて、母体にトリチウムを投与した場合の中枢神経系発達におよぼす影響を形態的に観察して定量化できる方法をも準備した。特に、脳細胞分化発達を定量的に追跡する方法を確立し、トリチウム影響研究に利用する。 今年度は特に有機結合型トリチウムの影響を調べるため、^3H-チミジン、^3H-アミノ酸など4種のトリチウム標識化合物を用い、DNA前駆物質やRNA前駆物質ならびにタンパク質生合成前駆物質に取り込まれたトリチウムの特異的影響の有無を検討した。培養胚細胞の増殖ならびに分化を50%阻害する量、ID50を比較することにより効果を比較したところ^3H-チミジンがもっとも影響が大きかった。
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