環境中に放出された微量汚染元素の土壌への収着挙動を明らかにする研究の一環として、札幌市近郊の5ヵ所から泥炭を含む表層土壌を1996年6月から8月にかけて採取した。 110℃で乾燥した試料に対して水分および鉱物組成のデータを得た。イオン選択性電極(アンモニア電極)を用いた電気化学的手法によりアンモニア含量および陽イオン交換能(CEC)を測定。収着実験における諸条件を確立するため、土壌懸濁液の示すpHの経時変化、バッチファクターの検討を行った。Zn-65をトレーサーとして、これらの試料の収着等温線を作成。また、Zn(II)の収着量におよぼす有機物の影響を評価するため、熱処理(450℃、24時間)した試料についても未処理試料の場合と同様な収着実験を行った。 これらの検討を通して、次のことがらが明らかになった: 1.本実験条件下において、土壌試料はZn(II)の収着に関していずれも10^<-4>mol/100g dry soil程度の飽和収着量を有する。 2.電気化学的に得られた土壌のCECはZn(II)の飽和収着量に比較して20-60倍大きい値を示し、CECに対する飽和収着量の割合は、土壌溶液のpHと正の相関関係を示した。 3.熱処理後の試料の飽和収着量は未処理の場合に比較して一定の傾向を示さず、採取地点に特有な土壌の構成成分の違いを反映している。 現段階で特筆すべき結論として、表層土壌は種々の鉱物や有機物の混合物であるにもかかわらず、Zn(II)のような汚染元素にイオン交換的な収着サイトを提供する能力を有すること、泥炭に多く含まれる分解度の低い有機物は、錯形成等によりZn(II)を収着する能力をほとんど持たないことがあげられる。
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