現在、湖沼の嫌気層における硫酸還元は硫酸塩から硫化水素へ1ステップで起こると考えられている。所が、裏磐梯の小野川湖における観測結果は、硫酸塩の現少量と硫化水素の増加量の間に1ケ月のタイムラグがあり、両者の間に亜硫酸塩やチオ硫酸塩等の中間生成物が生成している可能性を強く示唆している。本研究は、1)小野川湖の嫌気層で硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、硫化水素を測定し、これら化合物の間のマスバランスより、2)培養実験より硫酸還元過程を再検証することを目的にした。その結果、次の事項が明らかになった。 1.現場観測による検証 従来、測定例のない亜硫酸塩、チオ硫酸塩を測定した所、両者共に水塊が嫌気的になると蓄積し、10月7日に底上60cmでそれぞれ最大値1.5μmol/l、0.72μmol/lを記録し、中間生成物の存在は確認された。しかし、天然現象は振れ幅が大きく、今年度、小野川湖では嫌気層の発達が十分ではく、嫌気的期間も短く、嫌気層の深さも小さかった。その結果、硫酸還元も活発ではなく、生成し蓄積した硫化水素の最大値は5.3μmol/lで、平成6年度の31mol/lの1/6、平成7年度の22μmol/lの1/4であった。それ故、マスバランスによる硫酸還元過程を検証するに足るデータは得られなかった。今後、観測を継続し、論証して行きたい。 2.培養実験による検証 電子供与体としてグルコースを添加すると硫酸還元は一番活発に行われ、実験開始後37日後に亜硫酸塩、チオ硫酸塩、硫化水素が同時に急激な増加を始めた。2週間後にはそれぞれ35、25、80μmol/l増加し、前2者は極大となりその後減少に転じたのに対し、硫化水素はその後も増加し続けた。今回の実験は硫酸塩濃度を80mmol/lに設定し、濃度が高すぎる事が判明したので、実験条件を適正化し実験を続ける予定である。
|