本研究は琵琶湖を研究フィールドに、底泥微生物代謝が環境浄化に果たす役割を明らかにし、湖沼環境改善に必要な知見提供を目的とする。平成8年度予備調査では、富栄養化度の低い北湖でも脱窒、メタン生成代謝活性の高い事が示された。この内容確認とともに、支配機構を明らかにするため、平成9年度調査では、北、南湖を通じ水深の異なる100点の調査を実行した。底泥浄化能力の定量的把握のため、コアサンプラーで底泥を採取、炭素・窒素の分布プロファイルを作成した。北湖底泥表層の有機物含量は湖岸がら湖心に向かって漸増する傾向が認められた。炭素・窒素とも表層0-2cmに集中して分布しており、4cm以深15cmの層の有機物含量変化はほとんどなかった。有機物含量の縦方向減少が無機化過程の反映とすると、湖心付近では湖底に供給された有機物の80%以上が表層4cmにおいて分解されたと判断された。この傾向は湖心に近いほど顕著であり、湖岸に近づくにつれて表層有機物分解は低下する傾向にあった。南湖底泥のプロファイルは湖岸部に類似していた。底泥有機物C/N比の表層0-4cmの変化が湖心に比べて湖岸で緩やかで、湖心と湖岸では供給有機物に質的な差があると推察された。外来、内生的有機物指標の窒素安定同位体比を測定したところ、湖心部(7-8‰)より湖岸部で低く(5-6‰)、湖心部は内生有機物供給が相対的に大きいことが示唆された。このことは、富栄養化の鍵過程である内部生産有機物は、湖心部底泥で8割近くが浄化されることを示す。酸化的表層以深は還元的であり、上記の有機物分解に伴い、脱窒による窒素浄化がおきていると判断される。この浄化能力把握のため、採取試料の亜酸化窒素生成能力を検討したところ、有機物分解とカップルした脱窒素活性がみられ、富栄養化制御におけるその能力の量的評価をすすめている。
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