研究概要 |
完新世(特に3,000〜6,000年前)における旧海面高度の観測値を得るために、北海道オホーツク海沿岸網走から斜里にかけての海岸低地で、掘削による地質調査、すなわち、コア堆積物の採取と採取地点の水準測量を実施した。本地域を調査地域に選定した理由は、本地域には活断層が集中的に分布するため、調査地点間の旧海面高度の比較から断層運動に伴う地盤変動の検出に最適と判断したからである。 コア堆積物は網走湖沿岸(呼人とポント-)で2本、涛沸湖沿岸で1本、涛沸丸万川下流で1本、斜里平野で2本の計6本を採取した。網走湖沿岸呼人と涛沸湖沿岸で採取したコア試料中には貝化石が含有され、それらについて放射性炭素14Cによる年代測定を実施した(測定は(株)地球科学研究所に依頼)。年代測定の結果は次のとおりである。 呼人コア 標高 -1.41m 3,850±50yrsBP 涛沸湖コア 標高 -0.23m 1,290±60yrsBP 涛沸湖コア 標高 -2.31m 3,410±60yrsBP 現在、コア堆積物の珪藻分析およびイオウ分析を行い、旧海面高度を指示する海成層の上限(マリーンリミット)の認定を進めている。現在までのところ、網走湖呼人におけるマリーンリミットは標高-1.00m付近と考えられ、調査地点ごとにマリーンリミット高度に違いがあることが明らかになりつつある。この高度差は断層ブロック単位での地盤変動の違いを反映している可能性が高い。 来年度は、今年度の分析結果を踏まえて、さらに調査地点を追加し、断層ブロックごとに3,000〜6,000年前のマリーンリミットを認定する。そして断層ブロックごとの相対的海面変動の観測値をもとに、ブロック間のテクトニックな変動の評価を試みる予定である。
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