昨年度に引き続き、完新世における旧海面高度の観測値を得るために、北海道オホーツク海沿岸網走から斜里にかけての海岸低地で堀削による地質調査を実施した。本年度は、藻琴湖周辺で2本、涛沸湖湖岸で1本のコア堆積物を、止別と斜里町美咲では排水溝工事のトレンチ断面より堆積物試料をそれぞれ採取した。昨年度および本年度に採取したコア堆積物について、堆積年代を知るために^<14>Cによる年代測定を実施した。 これまでに採取した堆積物について、泥炭層が集積しはじめる層準の標高と年代を比較しところ、泥炭層の集積層準は藻琴湖地域で高くなる傾向を示した。この傾向は、当該地域の活断層分布から推定される藻琴地域の地盤隆起と反映する可能性がある。 一方、上記の調査に加えて、本年度は既存データのまとめの作業を行った。この作業では、堆積物中の珪藻遺骸群集とイオウ含有量の分析にもとづく旧海面高度の観測値と、ハイドロアイソスタシ-の変動モデルから導かれた理論値との比較から、北海道礼文島北部に位置する久種湖の完新世発達史を明らかにした。本研究は国際学術雑誌に発表予定である。北海道オホーツク海沿岸藻琴地域では、完新世中期〜後期の堆積環境と旧海面高度の観測値を明らかにした。本研究は学術雑誌に論文発表した。さらに、兵庫県赤穂平野においては、完新世中期〜後期にかけての相対的海面変動の観測値を明らかにし、理論値との比較から当該地域の沈降運動を示唆した。本研究もまた雑誌論文として現在投稿中である。
|