平成10年度は、京都市内におけるチョウの生息密度・種多様度調査を継続し、過去の目撃記録との比較から、トランセクト調査に求められる要件を検討した。また東京都内でも若干のチョウの調査を行った。 1. 日常生活で目撃するチョウとトランセクト調査で目撃するチョウの差異 京都市・桂の住宅地域において前年に引き続きチョウのトランセクト調査を行い、1991〜1996年のチョウの採集・目撃記録と比較検討した。1991〜1996年に京都市・桂で採集・目撃したチョウは、のべ31種であり、この種数をもとに算定したEI指数は60であった。これに対して、2年間のトランセクト調査で目撃したチョウは29種、EI指数は55であった。過去の目撃・採集記録の多い種と2年間トランセクトで得られた生息密度の関連を検討すると、過去の記録の多い種ほど生息密度が高かった。しかし、トランセクト調査を単年度でみると、過去の記録が多いにもかかわらず生息密度がゼロになる種が認められた。 このことより、トランセクト調査が日常生活で目撃するチョウを反映するには、少なくとも2年間の調査が必要と判断した。 2. 東京都内におけるチョウの生息密度と種多様度調査 東京都世田谷区の成城〜砧地区、および千代田区の赤坂御用地においてチョウのトランセクト調査をそれぞれ数回実施した。調査回数が少ないために細かな解析は行い得ないが、東京都内では大阪近郊の住宅街でほとんど目撃できないスジグロシロチョウがごく普通に目撃できる種であることを認めている。
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