研究概要 |
淀川右岸側支川の田園地河川芥川の本川・農業水路の流下過程で物質収支法による農薬変化量を定量し,河床付着生物膜の寄与を追跡調査した。栄養塩・有機物が低い濃度レベルのため,河床付着生物膜の現存量レベルは低いものの,水田から排出される農薬が水稲移植後の除草剤で始まり,殺虫剤・殺菌剤の流出が見られた。5月中旬〜7月中旬に週2回の頻度で調査を行った。農業水路は,三面コンクリート張で流速が1m/s程度と速く,河床等への生物膜の付着量が少く滞留時間も短いため,農薬の分解減少は殺菌剤のIBPでわずかに見られただけであった。本川は淵と瀬を交互に造り,養殖渓流魚を放流する魚釣り場とされていることもあり,流速が0.1〜0.3m/sと遅く,低レベルの現存量ながら付着生物膜も存在し,IBPが22%減少したほか,除草剤のThiobencarbの濃度減少も見られた。河床付着生物膜中にはEsprocarbとMefenacetが0.3〜1.0mg/m^2,Symetryn,Thiobencarb,Butachlor及びIBPが0.02〜0.06mg/m^2の濃度で残存していた。淀川左岸側支川の市街地河川天野川の1.4kmの流下過程の物質収支で,3日おきの定期調査で栄養塩の変化量と河床付着生物膜の剥離量の評価した。河川水中のChl-a濃度は,栄養塩・有機物濃度レベルの低い芥川で2〜15μg/lの範囲内で通常は3μg/l前後と低いのに対して,栄養塩・有機物濃度レベルの高い天野川で1〜39μg/lの範囲内で9μg/lと高く,晴天継続時の河床での現存量は圧倒的に高レベルであった。河床付着生物膜中には細菌が高密度で存在するため,河床付着生物膜との十分な接触時間さえ確保すれば,農薬・界面活性剤等の合成化学物質を分解・減少することが明らかであり、薄層流状態で流下時間を大きくする流路の人工的な工夫が必要である。
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