研究概要 |
天野川の上・中・下流3地点において,1997年5月中旬より2週間前後の休止期間3回を挟んで,3日に1度の定時水質調査を継続した。1998年1月下旬から12月上旬までは休止期間なしての約11ケ月の連続調査となった。上・中流域内の5つのゴルフ場から全部または一部の排水が流入するが,化学物質の主たる対象を水田施用農薬に絞って,農薬の流出特性と途中から農薬の流入のない中・下流地点間(1.2km)の流下過程における濃度・負荷量の減少量の評価を行った。1998年は1997年とほぼ同じ農薬が検出されたが,1998年はオキサジアゾン・ビロキロン・イソブロチオランが高濃度で検出され,マラチオン・ブタクロールが検出されなかった。ベンチオカルブ・イソブロチオラン・オキサジアゾン・ダイムロン・ピペロホスは6〜25%の増加となったが,これらの農薬は濃度変化の著しいタイミングでの採水となったためか,実際の流下時間間隔より短い時間間隔での調査のために同じ水塊の流下を捉えられないことが多かったことによると考えられる。ダイアジノンは5%,BPMCは17%,ビロキロンは19%,エスプロカルブは20%,シメトリンは30%,プレチラクロール42%,.IBPは43%,ビリブチルカルブは47%減少した。また,中流地点で低濃度で数回しか検出されなかったビフェノックスとメフェナセットは,下流地点では検出限界以下の濃度となり,形式的には100%の減少となった。この1時間弱の流下過程で農薬負荷量Lが1次反応式(L=L_0・10^<-kt>)に従って分解減少すると仮定すれば,この反応係数kは有機物質の総括的な自浄係数に当たり,1〜32%の減少はkの値で0.14〜4(1/日)となる。このうちkの値で2を超えるような20%以上の減少となる農薬は,天野川のような流下過程では懸濁物質への吸着・沈殿や河床付着生物膜への蓄積などによらなければ,これほどの減少はないと考えられる。
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