研究概要 |
1. ラン藻類の優占に及ぼす魚の影響に関する研究 国立環境研究所臨湖実験施設にある6つの屋外実験池を利用して、特に魚の導入、取り上げによりもたらされる生態系構造の変化が、藻類種や有機物、栄養塩の全湖的循環と代謝特性にどのような影響を与えるか、を実験的に調べた。魚のいない池では緑藻が、いる池ではラン藻が優占した。ラン藻が優占を始める前には、リン酸態リンが低濃度になり、再度それが高濃度になっても他の藻類種に置き換わることはなかった。すなわち、魚がいることで水中のリン酸態リン濃度が低下し、そうした状態で優位なラン藻が優占したものと考えられる。また、魚を投入した池としない池では、懸濁物、沈降物、底泥中のフェオ色素が異なっていて、そうした情報から魚の湖沼物質循環への寄与が推定可能であることがわかった。さらに、同上施設近傍の隔離水界(霞ケ浦に設置;6個;縦横5mx5m、水深2m)を用いた水質、生態系に及ぼす魚密度の影響に関する実験(バイオマニュピュレーション実験)に際し、DO,pH,水温の連続測定(5分間隔)結果から大気との交換速度を補正し、一次生産、呼吸速度を算出し、生物量、魚がいる、いないとこうした生物活性との関係を解析した。 2. 実水域での生物活性連続測定方法に関する研究 透明、不透明な箱中にDO,pH,水温センサーを取り付け、内部の水を適当な間隔で入れ替え、水域での一次生産、呼吸速度を測定する装置を作成した(明暗箱法)。この装置を涸沼湖心、広島県水産試験場のいかだに設置し、汽水湖と沿岸域での生物活性を連続測定した。こうした手法は実水域において生物活性を連続測定する基礎的手法となる可能性を有している。 3. 水草の池沼水質に及ぼす影響に関する研究 賀茂台地にある20のため池を対象に、水質、底質、水草、流域特性などを調べた。今後、水草の管理による水環境管理の方向性が確認された。
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