研究概要 |
交流電磁界の生物影響を調べるために、周波数60Hz、強度0.5Tの電磁石を用いて、ゾウリムシ及び出芽酵母の行動、増殖についての影響を解析した。 ゾウリムシを用いた解析では、増殖についての影響は観察されなかったが、行動様式について2つの変化を認めた。1つは負の走地性が高められた。ゾウリムシは水面上層部に集まる傾向があるが、変動磁場によってこの傾向が著しく高まった。2つめは泳ぎにおける方向変換頻度の低下である。ゾウリムシは高頻度で方向変換するが磁場中ではこの頻度が10%程度減少した。上記の2つの変化ともその詳しい機構は不明であるがゾウリムシの運動にカルシウムイオンが関与していると考えられているので、磁場によってカルシウムイオンの細胞での挙動に変化がでているものと考えている。 出芽酵母を用いた解析では、ゾウリムシと同じく増殖についての影響は観察されなかった。また突然変異率の測定もおこなったが、野生型株及び、放射線感受性株(rad,rev)とも磁場による突然変異の誘発は見られなかった。 ヒトメラノーマにおいて0.5Tの変動磁場で突然変異率が6倍上昇したという報告がなされているが、上記のように出芽酵母では変化が見られなかった。その理由としては、ヒト細胞と出芽酵母での磁場感受性の差異、特にDNA修復機構の違いが考えられる。今後は出芽酵母において磁場感受性株の分離を行い、磁場影響を分子レベルで解析する予定である。
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