研究概要 |
ヒト白血病細胞株CMK86における血管内皮細胞(VEGF)の放射線誘導アポトーシス抑制効果の分子機序を明らかにすることを目的として実験を行い、以下の結果を得た。 1.VEGF刺激によるMCL1発現量の増加 アポトーシス抑制に働くことが知られているbclファミリー(BCL-2,BCL-XL,MCL-1)のmRNA発現量、蛋白発現量を、VEGF(50ng/ml)添加のメディウムで4時間刺激したCMK86細胞においてノーザンブロット、ウエスタンブロットハイブリダイゼーション法により検討した。VEGF刺激によりCMK86細胞においてBCL2、BCL-XLのmRNA、蛋白発現量に変化は認められなかったが、MCL-1のmRNA、蛋白発現量の増加が認められた。MCL1がVEGFによるアポトーシス抑制作用に関与していることが明らかとなった。 2.VEGF刺激により発現増加が認められた新規転写因子遺伝子ZK-7の同定 CMK86細胞においてVEGFにおいて発現誘導される転写因子遺伝子を同定するためにarbitrary PCRを行った。zinc-finger motifに相当するdegenerate primerを用いた結果、新規転写因子遺伝子ZK-7をクローニングした。 ZK-7蛋白は全長298アミノ酸でN-末端にKruppel-associated box (KRAB)-A boxを有し、続いて7個のC2H_2タイプのzinc-finger motifを持っていた。今後は、ZK-7蛋白が結合するDNA配列、およびZK-7蛋白が発現調節する標的遺伝子の同定を通じて、アポトーシスにおけるZK-7蛋白の役割を解明する予定である。
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