研究概要 |
酸性雨による土壌の酸性化が進行するにつれて水圏へのアルミニウムイオンの溶出が懸念されている。アルミニウムイオンまたはそのヒドロキソ錯体は植物に対し強い毒性を示す。一方有機物との錯体はほとんど毒性を示さないことが知られている。そこで天然水中に存在する代表的な有機配位子であるフルボ酸とアルミニウムイオンとの錯生成反応およびその構造を研究する第一段階として,1.アミノカルボン酸であるイミノジ酢酸(IDA),キノリン酸(QA)とアルミニウムイオンとの相互作用,2.フルボ酸の主官能基である芳香族カルボキシル基や水酸基を有するタイロン(Tr),サリチル酸(Sa),フタル酸(Pa)とアルミニウムイオンとの相互作用を^<13>C及び^<27>AlNMR法により検討した。27AlNMRスペクトルより錯体の組成,13CNMRスペクトルより錯体の構造が決定できた。また,pH3での27AlNMRスペクトルを利用して検量線法からフリーのアルミニウムイオン濃度を見積もり,錯体の生成定数を算出した。 1.pH3ではIDAは1:1及び1:2錯体が生成した。pHが上昇するにつれて2:2錯体も生成することが明らかとなった。なおIDAは3座配位子としてアルミニウムイオンと錯生成した。一方QAは窒素原子および一つのカルボキシル基を結合サイトとする2座配位子として錯生成した。すなわち5員環構造を有する錯体を生成した。 2.pH3においてTr,Sa,Phともに1:1錯体のみを生成した。すべてキレート錯体でありその安定度はキレート環のサイズに依存することがわかった。5>6>7の順に不安定となる。 これらの結果からフルボ酸の官能基のうちキレートを生成するものがアルミニウムイオンの結合に重要な役割を果たすことが推定される。特に5員環を形成できるものが強く錯生成すると考えられる。
|