現在では微量の重金属類、農薬、界面活性剤、漁網防汚剤、船舶塗料等の環境化学物質によって水環境のみならず、環境汚泥中に蓄積するこれら化学物質の複合毒性が憂慮されている。そこで本研究では、底質の毒性を評価する実験材料として線虫及び培養細胞系を取り上げた。CYPIAやメタロチオネインが環境化学物質に鋭敏に反応することを利用し、被験低物質中で飼育した線虫や底質より抽出した水を培地溶媒として培養した細胞への毒性を遺伝子レベルで推定する超高感度の環境汚染物質の毒性評価系をも確立し、環境水の複合毒性を総合的に評価する系を確立することを目的とし以下の成果を得た。 1)初代培養肝細胞や各種継代細胞系株を各種化学物質を含有する培地で培養し、MTT法やアラマ-ブルー法で細胞毒性を評価する。さらに、プラスミドcDNAの損傷やアポトーシスを指標としたこれら化学物質の毒性評価を細胞株で検討できた。 2)実際に環境水及び底質と一定時間混合した水で試験水や培地を作成し細胞を培養し、DNA損傷及びメタロチオネイン及びCYPIAmRNAの発現やMTT法などの細胞毒性評価する。 環境化学物質はダイオキシンをはじめとした女性ホルモン用作用をもつ環境エストロゲンとして作用していることが憂慮されている。そこで現在、低質の環境エストロゲン作用を評価する実験材料として線虫を取り上げエストロゲンの指標としてピテロゲニンのmRNA測定に取り組んでいる。 昨年度と本年度の研究結果から、各化学物質の影響を精査することで、環境水や汚泥中の化学物質の複合汚染状況を数量的に明確に表すことができれば、単なる生物指標に数段まさる評価法が確立でき、海洋や沿岸漁場の汚染に対する早期発見の大きな手がかりとすることができると考えられる。
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