研究概要 |
ラットにディーゼル排気微粒子(DEP)懸濁液(2mg/kg)を1日おきに1,3,5,7回経気道投与し,気管支肺胞洗浄(BAL)を行い気管支肺胞洗浄液(BALF)中の細胞を回収した.対照群には懸濁溶液のみ(0.05%Tween80含有PBS)を投与した.BALにより回収されたBALF中の総細胞数はDEP投与群でいずれの投与回数でも,対照群の約2倍に増加していた.対照群のBALF中の細胞は大部分がマクロファージ(Mφ)であったが,DPP単回投与では約40%がMφ,約60%が好中球であった.またDEPの繰り返し投与群ではいずれの投与回数でも約70%がMφ,約30%が好中球であった.このBALF中の細胞からのPeroxynitrite生成量をルミノールの化学発光法で測定した.その結果DEPを単回投与したラットのBALF中の細胞からのPeroxynitrite生成量は,Control群の約10倍と有意に増加した.DEPを3回繰り返し投与するとPeroxynitrite生成量は単回投与群の40%にまで減少し,5,7回と投与回数を増やすと再び徐々に増加する傾向が認められた.またMφおよび好中球を活性化しスーパーオキシド(O_2・-)を産生させるホルボールエステル(TPA)の刺激によりPeroxynitriteの生成量はさらに増加し,TPA刺激前の約2倍に増加した.以上の結果DEPによる肺での炎症発症機構は次のように考えられた.肺胞内に吸入されたDEPはMφに貧食され,おそらくMφから好中球や単球の遊走因子の放出を刺激する.さらにMφあるいは好中球を活性化し,O_2・-と一酸化窒素(NO)の産生を惹起する.O_2・-とNOは反応しPeroxynitriteが生成する.またDEPから産生されるO_2・-はさらにPeroxynitriteの生成を増大させる.このPeroxynitriteにより肺での炎症が惹起されると考えられる.
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