研究概要 |
消毒剤や各種消毒副生成物による免疫修飾作用またはアレルギー反応のアジュバント作用を検索する目的で研究を行った。昨年度は、個々の消毒副生成物の毒性を明らかにするため、Kat-sod assayを用いた活性酸素産生による酸化的細胞傷害性を検討するとともに、マウスリンパ球幼若化反応に対する8種類の消毒副生成物の影響を検討し、glyoxal、chloral hydrateなどのアルデヒド類が活性酸素を産生するとともに、T細胞幼弱化反応よりもB細胞幼弱化反応に対して強い阻害作用を示した。本年度は、まずラット癌化好塩基球RBL-2H3細胞からのβ-hexosaminidase遊離に及ぼす有機消毒副生成物の影響について検討した結果、ビオチニール化抗DNP-IgE抗体-アビジン複合体による脱顆粒反応の誘導時にはいずれの化合物も影響を及ぼさなかったが、非誘導時にdichloroacetaldehyde、dichlorophenol、2,4,6-trichlorophenolが弱い脱顆粒反応を誘起することが示された。つぎに、消毒副生成物自体は低分子であり抗原となる可能性は少ないため、混合物としてのフミン酸の塩素処理副生成物に着目し、マウスに塩素処理したフミン酸の濃縮物と抗原としてDNP-OVAを同時腹腔内投与することにより、そのアジュバント作用を検討した。その結果、塩素処理フミン酸濃縮物はアジュバント作用を示さなかったが、抗DNP-IgE産生量をむしろ抑制した。また、脾臓細胞中のB/T細胞比において抗原単独投与群と比べ塩素処理フミン酸濃縮物と抗原の同時投与群で有意な上昇が認められた。そのため、塩素処理副生成物の混合物としての塩素処理フミン酸濃縮物は免疫抑制を引き起こす可能性が考えられた。
|