研究概要 |
本年度は本実験の予備実験と実験条件設定を行うために,1prマウスとして最も症状が重いとされているMRL/Mpj-1pr/1prマウスを用いた実験をおこなった. 実験条件等は研究計画・方法に述べたものとほぼ同じであるが,照射時間時期を疾患の発症後とするために生後10週からとした.実験群は1日0.049Gyのガンマ線を週5回計20回照射(総線量0.98Gy)する緩照射群(I群)と,0.98Gyを1回照射する急照射群(II群),4Gyを1回照射する高線量急照射群(III群)に分けた.各群とも照射後6時間後に屠殺,脾臓,胸腺よりT細胞を取りだし,T細胞表面抗原分別用抗体で染色後,フローサイトメーターを用いて各分画の変化を調べた.また脾臓,胸腺の一部で組織切片を作成しアポトーシスの発生状況を観察した. 各群ともマウスの体重や脾臓・胸腺重量に明瞭な変化は見られなかった.脾臓におけるT細胞の各分画の変化については,II群とIII群でCD4^-CD8^-とCD4^+CD8^-の各分画が非照射群と比べて明瞭に減少した.胸腺についてはII群とIII群でCD4^+CD8^+の分画が非照射群と比べて明瞭に減少した.脾臓と胸腺におけるアアポトーシスは,照射6時間後で全ての群で線量依存性に観察された. 本年度の実験では,I群でのCD4^-CD8^-の異常蓄積T細胞の減少が見られず,急性照射群で脾臓のCD4^-CD8^-とCD4^+CD8^-の分画細胞群,胸腺でCD4^+CD8^+の分画細胞群の放射線感受性が高いことがわかったが,Makinodanらの実験結果とは異なっており,マウスのバックグランドの違いを反映している可能性が示唆された.アポトーシスに関して,このマウスではFAS-FASリガンドシステムが欠如しているにもかかわらず,線量依存性に発生しており,放射線によるアポトーシスはFASを介さない経路によることが判明した.
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