研究概要 |
我々はこれまで、ディーゼル排気微粒子(DEP)をアレルゲンと共にマウスに気管内投与すると、好酸球の浸潤を伴う慢性的気道炎症等の気管支喘息の基本的病態が発現するとともに、マウスの系統によってその病態発現の程度が著しく異なることを見いだした。 今回、このマウスの系統の差から喘息様病態発現のメカニズムを解析することを目的に、5系統のマウスに、0.05mgのDEPを毎週一回ずつ12回、OAは1μgを3週間に1回ずつ4回気管内投与し、最終投与の24時間後に屠殺して肺の病理標本を作成し、喘息様病態指標の計測を行った。さらに、血清を分離し、その中のIgEとIgG1抗体価を測定した。 その結果、血清中IgE抗体価はどの系統のマウスにおいても変化しなかった。一方、血清中IgG1抗体価は、CBA,BDF,ICR,C57/BL,C3H/Heの順に増加し、系統間の抗体価(titer)は200位から20万まで増加していた。また、気道粘膜周辺への好酸球浸潤と気道上皮の粘液産生細胞の過剰増生等もIgG1増加の順に増加しており、好酸球浸潤の割合と粘液産生細胞の増生割合はIgG1値との間に統計的に有意な相関性が認められた。 これらの結果から、気道炎症や粘液過剰産生のような喘息様病態の発現は、IgEとではなく、IgG1と関連しているものと考えられる。今後は、さらに定量的な検討を行う予定である。
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