これまで、ディーゼル排気微粒子(DEP)をアレルゲンと共にマウスに気管内投与すると喘息様病態が発現し、その病態の程度は2系統のマウスで著しく違うことを認めた。そこで我々は、5系統のマウスにDEP(50μg)+OA(1μg)を3週間に1回ずつ気管内投与し、喘息様病態指標(気道粘膜への好酸球浸、や気道上皮の粘液産生細胞増生)の計測と血中抗体価を測定し両者の関係を調べた。その結果、マウスの系統によってその病態発現の程度が著しく異なり、その病態は血中IgE抗体価とではなく、IgG1抗体価と有意な相関性があることを見いだした。 次に我々は肥満細胞を欠損したマウスを用いて、同様にDEP(50μg)+OA(1μg)を3週間に1回ずつ気管内投与し、IgEが結合する相手の無い状態のマウスではIgEとIgG1抗体価がどう変わり、喘息様病態(好酸球性気道炎症や気道上皮の粘液細胞化)の発現はどのように変化するかを調べ、喘息発現におけるIgG1抗体価の役割を明らかにすることを試みた。その結果、肥満細胞を欠損したマウスにおいてもDEPとアレルゲンとの併用投与によって気管支喘息病態は増強された。一方、血中のIgE抗体価は低くかったが、IgG1は非常に高い抗体価を示した。この結果は喘息様病態発症には肥満細胞やIgE抗体よりも気道への好酸球浸潤と共にIgG1抗体の産生が重要であり、DEPはこれらの誘導を高めるものであることが示唆された。マウスを用いた本研究の結果から、IgEを介さない新しい喘息様病態発現のメカニズムが明らかにされた。
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