汚染物質として、酸性物質を取り上げ、土壌の酸性化と土壌微生物相との関係を調べた。土壌は、砂質土と火山灰土を用い、それぞれの土壌に硫酸、あるいは水酸化カルシウムを添加し、pHが約4〜7の範囲の8通りのpHの土壌を作成し、各土壌中の細菌数、グラム陰性細菌数、放射菌数、糸状菌数を調べた。また、各土壌に有機物として稲ワラを土壌の0.2%量添加した場合の菌数も同様に調べた。主な結果は、次の通りである。 1.土壌pHが低くなるほど、細菌数、グラム陰性細菌数は、減少する傾向にあり、糸状菌数は逆に増加する傾向にあった。両土壌とも、pH約4の土壌の方がpH約7の土壌に比べて、細菌数、グラム陰性細菌数は約100分の1に減少し、糸状菌数は千倍以上に増加した。菌相が特に大きく変化するのは、pHが約5.5のときであった。これは、pHを調整した直後も約6ヶ月室温で培養した後も同じ結果であった。また、酸性土壌で増加した糸状菌は、土壌中に普通に生息するPenicillium属の菌が多かった。 2.基質(稲ワラ)を添加した土壌では、無添加土壌に比べて全体的に各菌数は多い傾向にあったが、pHの影響は無添加土壌と同様で、pHが低くなるほど細菌数、グラム陰性細菌数が減少し、糸状菌数は増加した。この場合も、pH5〜5.5で菌相が大きく変化した。 以上のように、土壌の種類、基質の有無によらず、土壌pHと糸状菌数の間には、同じ様な関係がみられることから、糸状菌数が土壌の酸性化の指標になりうる可能性があると考えられた。
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