これまでに、酸や重金属を添加した土壌で糸状菌が優占することから、土壌中の糸状菌数が汚染土壌の指標になりうる可能性を報告してきたが、本年度は、野外の酸性土壌中の微生物相を調査し、糸状菌数が実際に増加しているかどうかを調べた。また、糸状菌が優占した土壌の物質代謝特性を明らかにするため、野外の酸性土壌および硫酸を添加して作成した人工的な酸性土壌での有機態炭素、窒素の分解活性を調べた。 酸性土壌の採取地は青森県大湊市の恐山で、硫気孔の周辺の草地および林地から採取した12地点の土壌を用いた。これらの土壌のpH、微生物数(糸状菌数、細菌数、放線菌数など)、酵素活性(セルラーゼ、β-グルコシダーゼ)、25℃で培養時のCO_2発生量、アンモニア化成量、硝酸化成量を調べた。また、つくば市内のマツ林から採取した土壌(pH約5)に硫酸を添加し、pH3.0〜5.0の範囲の6通りのpHの土壌を作成し、微生物数、25℃で培養時のCO_2発生量、アンモニア化成量、硝酸化成量を調べた。主な結果は次の通りである。 (1)恐山で採取した12の土壌のpHは2.8〜6.1で大半は4以下の酸性土壌であった。微生物の中で土壌pHと相関が高かったのは放線菌数で相関系数は0.86であった。糸状菌数は、必ずしもpHの低い土壌で多くなるという傾向は見られなかった。酵素活性、CO_2発生量、アンモニア化成量も土壌pHとの関係はみられなかった。硝酸化成量はpH4以下の土壌では少なかった。 (2)人工的にpHを調整した土壌でも、pH3.5までは炭素、窒素の無機化はpHによってほとんど影響を受けなかった。一方、硝酸化成はpH4以下の土壌ではみられなかった。したがって、有機物の分解は酸の影響を受けにくいが、硝酸化成は酸に対して感受性が高いと考えられた。
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